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Cleveland Clinic・理研・IBM、量子・HPC連携の化学計算でゴードン・ベル賞最終候補 1万2,635原子系を処理

米学術医療センターCleveland Clinic、理化学研究所(RIKEN)、IBMの研究チームが、量子プロセッサー量子プロセッサ / Quantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。とスーパーコンピューターを連携させた化学研究により、2026年ACM Gordon Bell Prizeの最終候補に選ばれた。対象研究では1万2,635原子のタンパク質系を扱い、新たな論文では量子・古典計算Classical Computing / Classical Computation0と1のビットを使って計算する、現在一般に使われているコンピューターによる計算方式。QI補足量子計算との比較対象として使われるが、CPU、GPU、スーパーコンピュータや専用アルゴリズムまで含み得るため比較条件に注意したい。資源をまたぐ処理の自動化と、タンパク質・リガンド結合エネルギー計算の精度改善を報告した。

✍️ Quantum Indexの視点
発表内容の背景にある技術・事業上の意味と、数字や見出しだけでは見えにくい評価ポイントを解説します。 独自分析を読む ↓

発表概要

研究チームは、IBM Quantum Heronプロセッサーと、スーパーコンピューター「Fugaku」「ROQUO(ろっこう)」、東京大学の「Miyabi-G」を組み合わせ、生物学的に関連する分子として既知最大規模とされる1万2,635原子のタンパク質系をシミュレーションした。 追加研究をまとめたarXiv論文では、RIKENのJHPC-Quantum GPUスーパーコンピューター「ROQUO」上で動作する、完全自動化されたエンドツーエンドのワークフローを提示した。複数の計算資源や組織をまたぐ際に必要だった手作業による調整とデータ移動を減らし、計算結果を得るまでの時間短縮につなげたとしている。 タンパク質とリガンドの結合エネルギー計算についても、ベンチマーク系で想定される結合挙動を従来より適切に反映する結果を得たと報告した。

重要ポイント

  • Cleveland Clinic、RIKEN、IBMの研究チームが2026年ACM Gordon Bell Prizeの最終候補に選出された
  • IBM Quantum Heronと複数のスーパーコンピューターを連携させ、1万2,635原子のタンパク質系をシミュレーションした
  • 新たな研究では、量子・古典計算資源をまたぐ処理をエンドツーエンドで自動化した
  • 自動化により、組織間の手作業による調整やデータ移動を削減した
  • タンパク質・リガンド結合エネルギーの計算精度が改善したと報告した

技術・事業上の意味

今回の成果は、量子プロセッサーとHPCを連携させた分子シミュレーションにおいて、計算対象の大規模化だけでなく、複数基盤をまたぐ運用の自動化と計算精度の改善を同時に進めた点に意味がある。こうしたワークフローは、より多くのタンパク質や実験条件、複雑な分子系を扱うための運用負荷を下げる可能性がある。一方、商用化の時期や事業モデル、古典計算に対する実用上の量子優位性Quantum Advantage / Quantum Computational Advantage特定の問題で、量子コンピュータが古典計算より速度、精度、コストなどで実用上の優位を示すこと。QI補足「量子超越性」と同義とは限らず、実用性を含めて使われることが多い。主張を見る際は比較した古典手法と評価指標を確認したい。は示されていない。

今後の注目点

今後は、自動化によって計算時間や人手がどの程度減ったのか、定量的な比較が示されるかが焦点となる。結合エネルギーの精度については、対象分子を広げた場合にも改善が維持されるか、古典計算手法との比較や第三者による再現が判断材料となる。さらに、より複雑な分子系への拡張性と、量子プロセッサーを組み込む実用上の利点が明確になるかが重要である。

✍️ Quantum Indexの視点

今回の成果で重要なのは、量子プロセッサー量子プロセッサ / Quantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。を単独で使ったことではなく、QPU、CPU、GPU、スーパーコンピューターをまたぐ異種計算を、実際の大規模な化学問題で一つの計算系として動かした点にある。ゴードン・ベル賞はHPC分野の賞であり、今回もQPU単体の性能というより、計算科学としてのスケールアップとシステム統合が大きな評価軸になっているとみられる。

計算の流れを単純化すると、次のようになる。

  • 大きなタンパク質系をフラグメントに分割する
  • ROQUOなどのHPC側で前処理や古典計算Classical Computing / Classical Computation0と1のビットを使って計算する、現在一般に使われているコンピューターによる計算方式。QI補足量子計算との比較対象として使われるが、CPU、GPU、スーパーコンピュータや専用アルゴリズムまで含み得るため比較条件に注意したい。、ジョブ制御を行う
  • 量子処理が必要な部分をIBM Quantum HeronなどのQPUへ送り、量子回路Quantum Circuit量子ビットに対する初期化、量子ゲート操作、測定などを順番に並べ、量子コンピュータで実行する計算手順を表したもの。QI補足同じアルゴリズムでも、使用する量子ビット数や回路深度、ゲート数は実装によって変わる。実機性能を比べる際は、回路の規模やコンパイル後の条件も確認したい。を実行する
  • 得られた結果をHPC側に戻し、CPU/GPUで後処理・再構成する
  • こうしたQPUとHPCの往復を、ROQUOが一連のワークフローとして連携・実行する

ROQUO自体は量子コンピューターではなく、NVIDIA Blackwell GPUとGrace CPUを中心に構成されたGPUスーパーコンピューターだ。135ノードで構成され、NVIDIA GB200 NVL4を135基、Blackwell GPUを計540基、Grace CPUを270基搭載し、ノード間通信にはNVIDIA Quantum-X800 InfiniBandを使用する。ここでの「Quantum-X800」も量子計算を意味する名称ではない。

ROQUOが量子計算基盤として重要なのは、内部に量子計算素子を持つからではなく、量子コンピューターとHPCを連携させるJHPC-quantumプロジェクトの中核計算基盤として位置付けられているからだ。理研はROQUOを、神戸のIBM Quantum System Two「ibm_kobe」や和光のQuantinuum「Reimei」、さらに富岳などと連携させ、HPCで前処理 → QPUで量子回路を実行 → GPU/HPCで後処理という計算を一体的に実行する基盤として整備している。

その接続層にはCUDA-Qなどを利用する「SQC Interface」があり、QURI SDK Enterpriseも導入された。これにより、ROQUOや富岳の計算ノードから量子コンピューターへ処理を送り、結果を再びHPC側で処理するワークフローを構成できる。今回の自動化の意味は、こうした複数のハードウェアや拠点をまたぐ処理を、研究者が個別に調整する形から、一連の計算フローとして実行できる形へ移したことにある。

今回の取り組みでは、この構成を使って1万2,635原子からなるタンパク質系を対象に計算を行った。したがって、この数字はQPUだけでその規模を直接計算したことを意味しない。量子・古典双方の計算資源を役割分担させ、大きな科学問題までスケールさせたheterogeneous computingの成果として見る必要がある。

また、「最大210倍の精度改善」は、古典計算に対する量子計算の優位性を示した数字ではない。比較対象は以前の「量子・古典ハイブリッド手法」であり、改良したハイブリッド手法によって精度を高めたという結果だ。9月に報告された結合エネルギーのさらなる改善についても、改善自体は示されているものの、どのアルゴリズムや計算条件の変更がどの程度寄与したのかは、今回の発表だけでは明確ではない。

次に問われるのは、この複雑な量子・HPC構成を使うこと自体に、どれだけ計算上の価値があるかだ。同じ問題を高度に最適化したGPU/HPCのみの手法と、精度、wall-clock time、必要計算資源を揃えて比較し、QPUを組み込むことで具体的な利点を示せるか。さらに、このワークフローがタンパク質・化学計算にとどまらず、他の大規模な科学計算問題にも適用できる汎用性を持つかも、今後の重要な評価軸になる。

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出典

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