Microsoft、トポロジカル量子プロセッサ「Majorana 2」を発表 量子ビット寿命は平均20秒
Microsoftは、トポロジカル量子プロセッサ量子プロセッサQuantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。「Majorana 2」を発表した。超伝導体をアルミニウムから鉛へ変更した新たな材料構成により、量子ビット寿命量子ビット寿命Qubit Lifetime / Quantum Bit Lifetime量子ビットが量子状態を保持できる時間を指す表現。文脈によって、エネルギー緩和時間など特定の指標を意味する場合がある。QI補足コヒーレンス時間と厳密に同義とは限らない。数値を見る際はT1、T2など、何を「寿命」と呼んでいるかを確認したい。は平均20秒、一部では1分超に達したという。同社は開発計画を前倒しし、スケーラブルで実用的な量子コンピューターの実現目標を2029年に設定した。
発表概要
Majorana 2は、両端にマヨラナゼロモードマヨラナゼロモードMajorana Zero Mode / MZM特定の超伝導系などで現れると予測される、粒子と反粒子が同一という性質を持つゼロエネルギーの量子状態。QI補足トポロジカル量子計算の重要候補だが、観測がそのままトポロジカル量子ビットの完成を意味するわけではない。実証内容を分けて読む必要がある。を持つ2本の超伝導ナノワイヤーからなるトポロジカル量子ビットトポロジカル量子ビットTopological Qubit量子情報を物理系のトポロジカルな性質に保持し、局所的なノイズの影響を受けにくくすることを目指す量子ビット。QI補足誤りに強い量子計算につながる方式として期待される一方、方式や実証段階は企業・研究ごとに異なる。ニュースでは「トポロジカル量子ビット」の実現を何によって検証したのかを確認したい。「テトロン」を複数搭載するプロセッサである。技術論文では、材料変更の効果を示すために4量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。配列が使われた。 新しい材料スタックでは、Majorana 1で使っていたアルミニウムを鉛に置き換え、半導体活性領域にはヒ化インジウムとヒ化インジウムアンチモンの組み合わせを採用した。環境ノイズや誤りから量子ビットを保護するトポロジカルギャップは、従来プロセッサの2倍以上になったとしている。 Majorana 1の量子ビット寿命は1〜12ミリ秒だったが、Majorana 2では平均20秒に延び、一部では1分を超えた。操作時間はマイクロ秒単位であり、Microsoftは従来比で1,000倍以上の信頼性向上と説明している。 制御には、ナノワイヤー内の電子数が偶数か奇数かを判定するパリティ測定を用いる。単一ショット読み出しに加え、デジタルパルスで量子ドットとナノワイヤーを接続・切断し、2量子ビットの結合パリティも測定できるという。これは測定ベースの計算や量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。に必要となる機能である。 同社はDARPAのQuantum Benchmarking Initiativeを構成するUS2QCプログラムの最終段階に進んでおり、トポロジカル量子ビットに基づく耐故障プロトタイプの構築を目指している。AIを利用した材料設計などによって開発期間を半減できたとして、スケーラブルな量子コンピューターの目標時期を2029年としている。
重要ポイント
- 鉛を用いる新材料スタックにより、トポロジカルギャップがMajorana 1の2倍以上に拡大した。
- 量子ビット寿命はMajorana 1の1〜12ミリ秒から平均20秒へ延び、一部では1分を超えた。
- 4量子ビット配列で材料変更による性能向上を示し、操作はマイクロ秒単位で行われる。
- 単一ショット読み出しと2量子ビットの結合パリティ測定に対応し、量子誤り訂正に必要な測定ベースの制御を備える。
- MicrosoftはDARPAの評価プログラムで耐故障プロトタイプの構築を進め、2029年のスケーラブルな量子コンピューター実現を目標に掲げた。
技術・事業上の意味
量子ビット寿命とトポロジカルギャップの拡大は、トポロジカル量子ビットを耐故障量子計算へ拡張するうえで重要な技術的進展である。デジタル制御による結合パリティ測定も、量子誤り訂正を実装するための基盤となる。一方、今回示されたのは4量子ビット配列であり、論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。数や誤り率、量子誤り訂正の実証結果、製造歩留まりは明らかにされていない。DARPAの評価を受けながら耐故障プロトタイプを目指す工程は事業化への道筋を示すが、2029年目標の実現性を判断するには今後の定量的な成果が必要である。
今後の注目点
次の焦点は、結合パリティ測定を用いた量子誤り訂正の実証と、論理量子ビットの誤り率が示されるかである。4量子ビット配列から規模を拡大した際にも寿命と操作性能を維持できるか、製造歩留まりを含む再現性も重要となる。DARPAの評価下で進める耐故障プロトタイプの到達点と、2029年目標に向けた具体的な中間成果が今後の判断材料になる。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の発表は、トポロジカル量子ビットトポロジカル量子ビットTopological Qubit量子情報を物理系のトポロジカルな性質に保持し、局所的なノイズの影響を受けにくくすることを目指す量子ビット。QI補足誤りに強い量子計算につながる方式として期待される一方、方式や実証段階は企業・研究ごとに異なる。ニュースでは「トポロジカル量子ビット」の実現を何によって検証したのかを確認したい。の材料・デバイス技術が着実に前進していることを示す成果と評価できる。特に、量子ビット寿命量子ビット寿命Qubit Lifetime / Quantum Bit Lifetime量子ビットが量子状態を保持できる時間を指す表現。文脈によって、エネルギー緩和時間など特定の指標を意味する場合がある。QI補足コヒーレンス時間と厳密に同義とは限らない。数値を見る際はT1、T2など、何を「寿命」と呼んでいるかを確認したい。やトポロジカルギャップ、パリティ測定の改善は、耐故障量子計算に向けた重要な基盤技術であり、研究開発がデバイス実証からシステム実装を見据えた段階へ進みつつあることを示している。
一方で、「スケーラブル」という評価は、量子ビット寿命の改善だけでは判断できない。スケーラビリティを左右するのは、論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。の誤り率、量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。の実証、大規模集積時の再現性や製造歩留まりなど、システム全体の性能である。今回示されたのは4量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。規模の成果であり、耐故障システムへの飛躍には依然として大きな技術的ギャップが残る。従って、2029年という目標はかなりアグレッシブであると考えられる。その実現性を評価するには、今後公開される論理量子ビットや誤り訂正に関する定量的なデータが鍵となる。
