Pasqal、CPO・CHROを新設 実機導入・地域展開の拡大に合わせ経営体制を強化
中性原子方式中性原子方式中性原子量子コンピューター / Neutral Atom Quantum Computer / Neutral-Atom Quantum Computing電荷を持たない原子をレーザーなどで捕捉・配列し、その量子状態を量子ビットとして利用する量子計算方式。QI補足多数の原子を規則的に配置しやすい点が特徴。性能比較では原子数だけでなく、ゲート忠実度や再配置、損失率も確認したい。の量子コンピューターを開発するPasqalは2026年9月14日、Roberto Mauroを最高製品責任者(CPO)、Joëlle Lumbを最高人事責任者(CHRO)に任命した。製品戦略の一元化とグローバルな組織基盤の整備を進め、商用展開を支える狙いである。
✍️ Quantum Indexの視点
発表内容の背景にある技術・事業上の意味と、数字や見出しだけでは見えにくい評価ポイントを解説します。 独自分析を読む ↓
発表概要
Mauroは、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド、サービスを横断する製品戦略とロードマップを統括する。優先度の高い顧客ニーズに開発を集中させ、統合的な製品・サービスの構築と導入拡大を担う。 同氏は2024年1月にPasqalへ入社し、韓国を中心とするアジア太平洋地域の事業構築に携わったほか、日本、台湾、シンガポールでの事業機会開拓を進めた。以前はSamsungで約20年間、データ、人工知能、量子技術に関する投資や提携を担当し、Ciscoでも国際事業開発を経験した。 Lumbは、グローバル人材戦略、組織変革、リーダーシップ開発、企業文化を統括する。15年以上の経営幹部経験を持ち、組織設計、人材戦略、合併後の統合、スピンオフ、IPO準備、事業再編などに携わってきた。Pasqal入社前はNielsenIQとNielsenで、欧州、中東、アフリカなどの人事戦略を担当した。
重要ポイント
- Roberto MauroがCPOとして、ハードウェアからサービスまでを横断する製品戦略とロードマップを統括する
- Joëlle LumbがCHROとして、人材戦略、組織変革、リーダーシップ開発、企業文化を主導する
- MauroはPasqalのアジア太平洋事業に携わり、SamsungやCiscoで技術投資、提携、国際事業開発を経験した
- 今回の任命は、中性原子量子コンピューティングの商用展開と国際事業拡大を支える経営体制の強化に位置付けられる
技術・事業上の意味
今回の人事は、Pasqalが研究開発の成果を顧客向けの統合製品へ結び付け、事業規模を拡大するための体制整備である。CPOによる製品戦略の一元化は、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド、サービスの連携を強める可能性がある。同時にCHROを置くことで、国際展開に必要な人材、組織構造、リーダーシップの整備を進める方針だ。ただし、任命が売上や導入件数、技術ロードマップに与える具体的な効果は今回の発表では示されていない。
今後の注目点
今後は、顧客ニーズを反映した製品ロードマップの具体化と、ハードウェアからサービスまでを統合した提供形態が示されるかが焦点となる。商用化の進捗を判断するうえでは、顧客導入の拡大や地域別の事業展開が具体的な成果として表れるかも重要である。組織面では、国際展開を支える人材配置や運営体制の変化に加え、今回の任命が製品開発と事業執行の速度にどう反映されるかが観測点となる。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の人事は、CPOとCHROの任命そのものより、Pasqalの事業が実機開発だけでなく、導入、クラウド、ソフトウェア、地域展開を並行して進める段階に入っていることと合わせて見る必要がある。SEC提出資料によると、2026年3月時点でPasqalは7台のQPUQPU量子プロセッサ / Quantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。を稼働させ、3台を製造中としており、25件超の商用ユースケース、2025年の商用売上高1,650万ユーロを報告している。8月にはNasdaq上場を完了し、クロージング時点で約3.6億ドルの現金を確保した。
展開の仕方も広がっている。サウジアラビアではAramco向け量子コンピューターを稼働させ、2026年5月には同設備を使ったQCaaSを開始した。8月にはEleven Venturesとの商用JVを発表し、複数システムの展開を計画している。韓国でも9月、LG CNSとAIデータセンターと量子計算を組み合わせる3年間のMoUを締結した。単発の研究協力だけでなく、実機、クラウド、販売体制、地域拠点を組み合わせた展開が増えている。
そのため今回、ハードウェア、ソフトウェア、クラウド、サービスを横断する製品戦略をCPOに集約したことには一定の意味がある。Pasqal自身もMauroの役割として、顧客ニーズの優先順位付けと統合的な製品・サービスの構築を挙げている。地域や顧客ごとに案件が増えるほど、それらを個別対応のまま積み上げるのか、共通化された製品体系として横展開できるのかが事業拡大の論点になる。もっとも、今回の発表から、個別案件の製品化がCPO任命の直接の目的だとまでは確認できない。
CHROの新設も同じ文脈で見ることができる。SEC提出資料ではPasqalは世界で40以上の顧客・戦略パートナーと関係を持ち、フランスとカナダに製造拠点を持つとしている。事業地域と提供形態が増えれば、製造、技術支援、営業、パートナー管理を地域横断で運営する組織基盤も必要になる。
ただし、組織を整えたことと商用化が成功したことは別である。今後見るべきなのは、増えている実機導入やPoC、地域提携が、共通化された製品・サービスと継続的な売上へどこまで転換されるかだ。今回のCPO・CHRO任命は、その成果ではなく、Pasqalが次の事業段階に向けて内部体制を組み直している一つの材料と捉えるのが妥当だろう。
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