IQM、LUMI AI Factory向け量子コンピューターを2027年導入へ 2029年に最大9論理量子ビットを計画
IQM Quantum Computersは、LUMI AI Factory向け量子コンピューター「LUMI-IQ」を2027年から3段階で導入する計画を発表した。2029年の最終更新では、量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。による最大9論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。の計算と、論理量子ビット間の演算を可能にする計画である。
✍️ Quantum Indexの視点
発表内容の背景にある技術・事業上の意味と、数字や見出しだけでは見えにくい評価ポイントを解説します。 独自分析を読む ↓
発表概要
LUMI-IQは、フィンランド、チェコ、ノルウェー、ポーランドが共同所有し、EuroHPC Joint Undertakingと参加国が共同出資する量子コンピューターである。フィンランド・カヤーニにあるCSC – IT Center for Scienceの新データセンターへ設置し、LUMI-AI環境と統合する。 第1段階では、2027年に150物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。を備えたIQM Halocene H4を導入し、初期的な量子誤り訂正機能を提供する。2028年には論理誤り率の低減とリアルタイム誤り訂正への対応を進め、2029年にHalocene H5へ更新する計画だ。 最終段階では、高速なリアルタイム・フィードバックにより論理量子ビットを維持し、格子手術やTゲート・テレポーテーションを含む論理演算に対応するとしている。距離3の表面符号表面符号Surface Code / Surface Quantum Error-Correcting Code量子ビットを格子状に配置し、局所的な測定を繰り返して誤りを検出・訂正する代表的な量子誤り訂正符号。QI補足実装しやすさから有力視されるが、必要な物理量子ビット数はエラー率や符号距離などで大きく変わる。企業発表では「何個で1論理量子ビットか」の前提確認が重要。とカラー符号を用いた計算では最大9論理量子ビットを扱い、符号化は表面符号で距離11、カラー符号で距離9まで対応する計画である。 LUMI-IQとLUMI-AIは、HPC、AI、量子コンピューティングを組み合わせたハイブリッド基盤を構成する。従来型シミュレーションや機械学習、量子アルゴリズムを組み合わせる研究環境としての利用が想定されている。
重要ポイント
- 2027年に150物理量子ビットのIQM Halocene H4を設置し、初期的な量子誤り訂正に対応する計画である。
- 2028年の更新では、論理誤り率の低減とリアルタイム誤り訂正への対応を予定する。
- 2029年にHalocene H5へ更新し、最大9論理量子ビットによる計算を目指す。
- 最終構成では、格子手術やTゲート・テレポーテーションを含む論理演算に対応するとしている。
- CSCのデータセンターに設置し、LUMI-AIと統合したHPC・AI・量子コンピューティング基盤を構築する。
技術・事業上の意味
技術面では、物理量子ビットの導入からリアルタイム誤り訂正、論理量子ビット間の演算へ段階的に移行する構成が特徴である。最大9論理量子ビットという規模だけでなく、論理誤り率の低減や論理演算を継続できるフィードバック機構が、初期的な耐故障量子計算に向けた重要な要素となる。 事業面では、利用組織がシステムを共同所有し、既存のHPC・AI環境へ継続的に統合しながら更新する導入モデルを示した。一方、導入費用や詳細な性能指標、実用アプリケーションにおける既存計算手法への優位性は今回の発表では示されていない。
今後の注目点
まず、2027年のHalocene H4が計画通り導入され、150物理量子ビットと初期的な誤り訂正機能がどの性能指標で示されるかが焦点となる。続く更新では、論理誤り率の低減効果とリアルタイム誤り訂正の持続性、2029年に最大9論理量子ビットで論理演算を実行できるかが重要である。さらに、LUMI-AIとの統合後にHPC・AI・量子計算を組み合わせた利用事例や、従来手法との比較結果が公開されるかも判断材料となる。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の発表で重要なのは、「最大9論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。」という数字そのものより、IQMがこれまで進めてきた物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。の規模拡大から、量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。を前提とした論理量子ビットの操作へ開発軸を移そうとしている点にある。
IQMはこれまで、5量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。のSparkや20量子ビットのGarnet、54量子ビットのRadianceなど、物理量子ビットを直接利用するゲート型量子コンピューターゲート型量子コンピューター量子ビットに量子ゲートを順番に作用させて計算する方式。量子回路を組み立ててアルゴリズムを実行する、代表的な量子計算モデル。QI補足量子アニーリングなどとは計算方式が異なる。「ゲート方式」というだけで汎用・大規模な実用計算が可能とは限らず、量子ビット数や誤り率、回路の深さも重要になる。を展開してきた。Sparkは2023年に大学・研究機関向けとして発表され、Garnetでは20量子ビットQPUQPU量子プロセッサ / Quantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。について2量子ビットゲート忠実度ゲート忠実度Gate Fidelity / Quantum Gate Fidelity量子ゲート操作が、理想的な操作にどれだけ近く実行できたかを示す精度の指標。QI補足高いほど一般に良いが、測定方法や1量子ビット・2量子ビットゲートで値は異なる。比較時は評価条件も確認したい。中央値99.5%などを報告している。Radiance 54は、イタリアのCINECAでスーパーコンピューターLeonardoと統合する案件も進められている。
| 時期 | 主なシステム | 量子ビット規模 | 位置付け |
|---|---|---|---|
| 2021年 | VTT向けシステム | 5物理量子ビット | フィンランド初の量子コンピューターとして導入 |
| 2023年~ | IQM Spark | 5物理量子ビット | 大学・研究機関向けオンプレミス機 |
| 2024年~ | IQM Garnet | 20物理量子ビット | 20量子ビット級でゲート性能やシステム性能を検証 |
| 2025年~ | IQM Radiance 54 | 54物理量子ビット | HPCセンター向けを含む大規模オンプレミス機 |
| 2026年~ | IQM Halocene | 150物理量子ビット級 | 誤り訂正を前提とした製品ラインへ移行 |
| 2027年予定 | LUMI-IQ / Halocene H4 | 150物理量子ビット | 初期的な量子誤り訂正 |
| 2028年予定 | LUMI-IQ更新 | ― | 論理誤り率低減、リアルタイム誤り訂正 |
| 2029年予定 | Halocene H5 | 最大9論理量子ビット | 論理量子ビット間の演算を含む初期的な耐故障計算 |
ここで注意したいのは、表の「5→20→54→150→9」を単純な量子ビット数の増減として見てはいけないことだ。前半は主に物理量子ビット数、2029年の9量子ビットは複数の物理量子ビットを誤り訂正符号でまとめた論理量子ビット数であり、評価軸そのものが異なる。IQM自身もHaloceneを、NISQNISQNoisy Intermediate-Scale Quantum / NISQ誤り訂正が十分でない、数十〜数千規模程度のノイズを含む量子デバイスや、その技術段階を表す呼称。QI補足厳密な量子ビット数で区切られる分類ではない。FTQC以前の装置を広く指すため、具体的なエラー率や実行可能な回路を見る必要がある。計算を主眼としてきたRadianceから、量子誤り訂正へ移行する製品ラインと位置付けている。初期の150量子ビット版では99.7%の物理2量子ビットゲート忠実度を目標としており、最大5論理量子ビットの研究利用を想定している。いずれも目標値を含む点には留意が必要だ。
LUMI-IQはその延長線上で、2027年のHalocene H4から2028年のリアルタイム誤り訂正、2029年のH5へ段階的に更新する。最終構成では、距離3の表面符号表面符号Surface Code / Surface Quantum Error-Correcting Code量子ビットを格子状に配置し、局所的な測定を繰り返して誤りを検出・訂正する代表的な量子誤り訂正符号。QI補足実装しやすさから有力視されるが、必要な物理量子ビット数はエラー率や符号距離などで大きく変わる。企業発表では「何個で1論理量子ビットか」の前提確認が重要。またはカラー符号で最大9論理量子ビットを用い、格子手術やTゲート・テレポーテーションを含む論理演算まで対応するとしている。これは単に論理量子ビットを生成するだけでなく、それらを使って計算を構成する段階まで進むというロードマップである。
ただし、150物理量子ビットも最大9論理量子ビットもLUMI-IQで現時点に達成済みの性能ではない。特に重要なのは、符号距離を上げた際に物理エラー率より論理エラー率を実際に低くできるか、誤り訂正を繰り返しながら論理状態をどの程度維持できるか、論理ゲートをどの精度で実行できるかである。今回の発表では、具体的な論理誤り率や論理ゲート忠実度などは示されていない。
したがって、今後LUMI-IQを評価する際には物理量子ビット数の増加だけを見るべきではない。2027年のH4でどの水準の誤り訂正が実証され、2028年にリアルタイムQECがどの程度持続し、2029年に複数の論理量子ビットを使った演算でどの論理誤り率を達成するか。そこまで数値が公開されて初めて、「9論理量子ビット」という計画の技術的な重みを判断できる。
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