D-Wave、量子アニーリング向けソフト開発でカナダNRCから最大30万カナダドルを獲得
D-Wave Quantumは2026年8月12日、商用向け量子アニーリング量子アニーリングQuantum Annealing量子ゆらぎを利用して、組合せ最適化問題などの良い解を探索する計算手法。問題をエネルギーが低い状態を探す形に変換して解く。QI補足量子アニーリングは、汎用的なゲート型量子コンピューターとは異なり、最適化問題を解くことに特化した方式である。1990年代に西森秀稔氏らが理論的に提案し、現在はD-Waveが代表的な商用システムを開発している。性能を見る際は、量子ビット数だけでなく、問題の埋め込み方や古典手法との比較条件も確認したい。ソフトウェアの開発に対し、カナダ国立研究機関(NRC)から最大30万カナダドルの資金提供を受けると発表した。Advantage2でより大規模かつ複雑な最適化問題を扱うため、Zephyrトポロジー向けの新たなグラフ・マイナー埋め込みアルゴリズムを開発する。
✍️ Quantum Indexの視点
発表内容の背景にある技術・事業上の意味と、数字や見出しだけでは見えにくい評価ポイントを解説します。独自分析を読む ↓
発表概要
資金はNRCのApplied Quantum Computing Challengeプログラムを通じて提供される。D-WaveはNRCと連携し、ブリティッシュコロンビア州バーナビーのQuantum Centre of Engineering Excellenceを拠点に、次世代のソフトウェアとアルゴリズムを開発する。 開発対象となるグラフ・マイナー埋め込みアルゴリズムは、最適化問題をAdvantage2の量子プロセッサー量子プロセッサー量子プロセッサ / Quantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。が持つZephyr接続構造へ写像するための基盤技術である。成果はオープンソースのOceanソフトウェア開発キットへ統合する計画で、物流、製造、スケジューリング、資源配分、機械学習、量子・材料シミュレーションなどへの活用を想定している。
重要ポイント
- NRCからの資金提供額は最大30万カナダドルとなる
- 開発拠点はカナダ・バーナビーにあるD-WaveのQuantum Centre of Engineering Excellenceである
- Advantage2のZephyrトポロジーに対応するグラフ・マイナー埋め込みアルゴリズムを開発する
- 開発成果はオープンソースのOcean SDKへ統合する計画である
- 性能向上の具体的な指標や開発期間、商用導入による効果は明らかにされていない
技術・事業上の意味
グラフ・マイナー埋め込みは、最適化問題を量子プロセッサーの接続構造に合わせる基盤処理である。この処理を改善できれば、Advantage2で扱える問題の規模や複雑性を広げられる可能性がある。成果をOcean SDKへ組み込む計画は、研究者や企業が新しい手法を利用しやすくする点で事業上の意味を持つ。一方、従来手法に対する性能差や実際の業務における効果は今回の発表だけでは判断できない。
今後の注目点
今後は、新アルゴリズムがOcean SDKへいつ、どのような形で統合されるかが焦点となる。従来の埋め込み手法と比べて、扱える問題規模、解の品質、計算時間がどの程度変わるかを示す比較結果が重要だ。さらに、発表で挙げた物流や製造などの用途で実機評価や導入事例が示されるかが、商用上の効果を判断する材料となる。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の発表は、Advantage2のZephyr接続を実問題でどこまで効率よく使い切れるかというソフトウェア側の改善の取り組みだ。従来のAdvantageはPegasus、Advantage2はより高接続なZephyrを採用するが、任意の問題グラフをそのままハードウェア上に配置できるわけではなく、minor embeddingが必要になる。
特に全結合に近い問題では、論理変数数を n とすると必要な物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。数は概ね O(n2) で増えるため、Zephyrになってもこの本質的な制約が消えるわけではない。今回の研究は、Zephyr上でより短いチェーン、少ない物理量子ビット、より求解しやすい配置を探索し、このスケーリング上の制約の中でAdvantage2から引き出せる実効性能を高める試みと考えられる。
一方、30万カナダドルはD-Waveの事業やAdvantage2開発を左右する規模ではない。資金不足を補うというより、製品中核の大型開発とは別に、Ocean SDKへ還元する基盤的・探索的なソフトウェア研究を公的R&Dプログラムの枠内で進める性格が強い可能性がある。ただし、その位置付けやNRCの具体的な関与は発表からは分からない。
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