Classiq、台湾でScientek・Kenshoと同日提携 複数チャネルで量子ソフトウェア市場を開拓
Classiqは2026年9月2日、台湾でScientek CorporationおよびKenshoとそれぞれ市場開発提携契約を締結したと発表した。両社の現地顧客網を活用し、企業、研究機関、大学、政府機関などにClassiqのハードウェア非依存型量子ソフトウェア基盤を紹介するほか、導入支援、研修、顧客との面談、共同研究開発の可能性を探る。
✍️ Quantum Indexの視点
発表内容の背景にある技術・事業上の意味と、数字や見出しだけでは見えにくい評価ポイントを解説します。 独自分析を読む ↓
発表概要
Scientekとの提携では、台湾の半導体企業、研究機関、大学、政府機関などを主な対象とする。初期活動では、半導体関連研究、材料・化学シミュレーション、最適化、先進コンピューティングを重点領域に据える。Scientekは顧客への紹介に加え、導入支援や研修を担い、量子応用に関する共同研究開発も検討する。
Kenshoとの提携では、政府機関、研究機関、企業へのアクセス拡大を図る。初期対象として、シミュレーションや最適化に課題を持つ化学・材料企業、防衛組織、量子コンピューティングを評価中の組織を挙げている。Kenshoは顧客紹介、現地支援、研修、面談調整を担い、こちらも共同研究開発の可能性を検討する。
Classiqのプラットフォームは、開発者が量子アルゴリズムを高水準の機能モデルとして記述し、選択したハードウェアや実行環境に合わせて量子回路量子回路Quantum Circuit量子ビットに対する初期化、量子ゲート操作、測定などを順番に並べ、量子コンピュータで実行する計算手順を表したもの。QI補足同じアルゴリズムでも、使用する量子ビット数や回路深度、ゲート数は実装によって変わる。実機性能を比べる際は、回路の規模やコンパイル後の条件も確認したい。を自動生成する仕組みを採用する。特定の量子コンピューター方式に固定せず、複数の量子ハードウェア、シミュレーター、クラウド環境を前提に設計・評価できる点を特徴とする。
Classiqは両提携をSEMICON Taiwan 2026で紹介する予定で、Scientekおよび関連企業のブースなどを通じて、量子モデリング、回路合成、最適化、実行に関する機能を展示する。
重要ポイント
- Classiqが同日にScientek、Kenshoの2社と台湾向け市場開発提携を発表した
- Scientekは半導体、研究、大学、政府機関などを中心に顧客接点を広げる
- Kenshoは化学・材料、防衛、量子評価中の組織などを主な対象とする
- 両社とも顧客紹介に加え、現地支援、研修、共同研究開発の可能性を担う
- Classiqの基盤は高水準モデルから複数の実行環境向け量子回路を生成する
- 顧客名、契約金額、販売目標、最低購入額、具体的な共同研究案件などは公表されていない
技術・事業上の意味
技術面では、台湾の利用組織が特定の量子ハードウェアに固定されず、複数方式を前提に量子アプリケーションを設計・評価できる環境へのアクセスを広げる取り組みである。特に半導体、材料・化学、最適化など、将来的な量子計算の応用候補とされる領域との接点を増やす狙いがある。
事業面でより重要なのは、Classiqが台湾で1社に販売を委ねるのではなく、同日に異なる顧客基盤を持つ2社と提携した点である。Scientekは半導体・研究分野、Kenshoは化学・材料や政府・防衛などを対象にしており、複数のチャネルを並行して構築しながら、どこに実需が生まれるかを探る市場開拓型の展開と見ることができる。
一方、今回の発表だけでは、ScientekやKenshoに最低販売額やライセンス購入義務があるのか、案件獲得時に収益が発生する代理販売型なのかは判断できない。したがって、提携数そのものを将来売上と結び付けて評価するのは早い。
今後の注目点
今後は、セミナーや研修、初期評価からPoCや共同研究へ進む案件がどの程度生まれるかが焦点となる。特に台湾の半導体、材料・化学分野で、Classiqを利用した具体的な問題設定や実機検証が示されるかが重要になる。
また、ScientekとKenshoという2つのチャネルが実際に顧客契約につながるかも事業面での評価材料となる。顧客名、共同研究テーマ、継続利用、商用ライセンス契約に加え、販売目標や購入義務など契約の拘束力が明らかになれば、今回の市場開発提携の実質的な重みを判断しやすくなる。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の2件は、台湾で直ちに大きなライセンス売上を作るというより、量子ハードウェアが成熟するまでに利用者と案件候補の裾野を広げる市場形成策と見る方が実態に近い。同日にScientekとKenshoという異なる顧客基盤を持つ2社と契約したことからも、特定代理店に販売を託すのではなく、複数のチャネルを張って実需の所在を探る段階に見える。
その背景として興味深いのが、Classiqが2025年9月にRegev Yativ氏をCRO(最高収益責任者)に起用し、グローバルGTMを統括させたことだ。Classiqは当時、世界展開と需要獲得を加速する人事として位置付けており、1.1億ドルを調達した同年にはGTM体制の拡充も掲げていた。つまり会社として収益拡大を強く意識した体制を整えたことは読み取れる。一方、その後のAPACで目立つのは、単純なライセンス販売よりも教育、PoC、研修、パートナー開拓を組み合わせた長期型の取り組みである。
韓国でも同様の動きが見える。2025年のMegazoneCloudとのMOUでは、量子教育、顧客向けPoC、ワークショップ、ハイブリッド計算環境への技術統合などが中心だった。一方、2026年のQAIとの韓国向けQaaSでは商用契約に進み、中長期のcommercialization roadmapも掲げている。収益化を諦めたと見る根拠はないが、短期で商用化できる案件は取りに行き、それ以外では教育やPoCを通じて将来の顧客を育てるという二段構えになっているように見える。
これはClassiqの製品特性とも関係する。同社の強みは、高水準のモデルから複数の量子ハードウェア向けに回路を生成し、低水準の実装負担を減らすことにある。しかし、その抽象化が優れているほど、ユーザー企業には「量子ハードウェアが成熟してから使い始めても追いつける」という選択肢も生まれる。特に台湾の半導体企業のように足元の研究開発テーマが多い企業に、現在の量子ハードウェアで大きな業務価値が見えない段階から時間と予算を割いてもらうには、単なるソフトウェア販売とは異なる市場づくりが必要になる。
そのため今回の台湾展開を評価するうえでは、短期のライセンス売上だけを見るべきではない。研修からPoC、共同研究、継続利用へどれだけ案件を育て、最終的に商用契約へ転換できるかが重要になる。台湾で複数チャネルを構築したこと自体より、そのチャネルが数年単位で実需へ変わるかが、この戦略の成否を決める。
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