D-Wave、デュアルレール量子ビットで高忠実度の2量子ビットゲートを実証
D-Wave Quantumは、超伝導デュアルレール量子ビットデュアルレール量子ビットDual-Rail Qubit / Dual-Rail Encoding2つの物理モードのどちらに励起があるかなどを使って、1つの量子ビットを表現する符号化方式。QI補足光子や超伝導共振器など複数の実装で使われる。ニュースでは、どの物理系で何をエラーとして検出・抑制できるのかを確認したい。向けの2量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。もつれゲートを実証した。約99.9%の忠実度と約500ナノ秒のゲート時間を達成し、2量子ビット演算中もハードウェアレベルの誤り検出に適した性質を維持した。研究成果は査読付き学術誌Natureに掲載された。
発表概要
発表された論文「An entangling gate for dual-rail erasure qubits」は、耐故障ゲート型量子計算に必要な量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。のハードウェア負担を抑えることを目的とした研究である。デュアルレール構成は、頻度の高い量子エラーを検出・訂正しやすい形にする誤り階層を特徴とし、今回の実験ではその性質が2量子ビット演算中も保たれた。 D-Waveによるシミュレーションでは、誤り訂正能力を一段追加するごとに論理エラー率を最大10分の1にする「Lambda 10」の可能性が示された。同社は、今回のゲートを自社のゲートモデルシステムに既に統合し、同等の性能を得ていると説明している。 この成果は、2032年までに100論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。で100万回超の演算を実行するシステムを完成させるというD-Waveの開発ロードマップに位置付けられている。ただし、実用規模で必要となる物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。数やシステム全体の論理エラー率は示されていない。
重要ポイント
- Nature掲載論文で、デュアルレール量子ビット向けの2量子ビットもつれゲートを報告した
- 2量子ビット演算で約99.9%の忠実度と約500ナノ秒のゲート時間を実証した
- ハードウェアレベルの誤り検出に適した誤り階層を、2量子ビット演算中も維持した
- D-Waveのシミュレーションは、誤り訂正の追加ごとに論理エラー率を最大10分の1にできる可能性を示した
- 同社は2032年までに100論理量子ビット、100万回超の演算を目標としている
技術・事業上の意味
技術面では、超伝導量子ビット超伝導量子ビット超伝導方式 / Superconducting Quantum Computing / Superconducting Qubit超伝導回路を極低温で動作させ、電気的な量子状態を量子ビットとして利用する量子コンピュータの実装方式。QI補足高速なゲート操作などが特徴だが、性能は量子ビット数だけでは決まらない。ゲート忠実度、コヒーレンス時間、接続性、誤り訂正への対応も確認したい。の高速な操作と、高忠実度の2量子ビット演算、ハードウェアレベルの誤り検出を両立できる可能性を示した点に意味がある。Lambda 10が大規模システムでも成立すれば、耐故障量子計算に必要な物理量子ビット数と古典制御系の負担を抑えられる可能性がある。 事業面では、D-Waveがアニーリング方式アニーリング方式量子アニーリング / Quantum Annealing量子ゆらぎを利用して、組合せ最適化問題などの良い解を探索する計算手法。問題をエネルギーが低い状態を探す形に変換して解く。QI補足量子アニーリングは、汎用的なゲート型量子コンピューターとは異なり、最適化問題を解くことに特化した方式である。1990年代に西森秀稔氏らが理論的に提案し、現在はD-Waveが代表的な商用システムを開発している。性能を見る際は、量子ビット数だけでなく、問題の埋め込み方や古典手法との比較条件も確認したい。に加えて進めるゲートモデル方式の技術的な根拠となる。ただし、Lambda 10はシミュレーションに基づく見通しであり、商用規模のシステムにおける性能や開発時期の確実性を示すものではない。
今後の注目点
次の焦点は、量子ビット数を増やした実機でも約99.9%の忠実度と誤り検出の利点を維持し、Lambda 10に近い論理エラー低減を示せるかである。あわせて、論理量子ビット当たりに必要な物理量子ビット数や古典制御の負担、統合済みシステムの詳細な性能データが示されるかが判断材料となる。2032年目標に向けて、100論理量子ビットと100万回超の演算へ至る中間規模の実機成果が公開されるかも重要となる。
✍️ Quantum Indexの視点
D-Waveが示した99.9%は、確かに目を引く。ただし、この数字はすべてのエラーを含む「無条件の成功率」ではない。ゲート当たり約0.5%の消失エラーを検出して取り除いた後に、残るエラーを約0.1%に抑えたという成果だ。
それでも、この研究を単なる“ポストセレクション込みの99.9%”として片付けるべきではない。量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。では、エラーをゼロにすること以上に、エラーが起きた場所を特定できることが重要だからだ。今回の本当の成果は、99.9%という見栄えのよい数字ではなく、検出しやすいエラーを支配的にしたまま2量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。ゲートを成立させた点にある。
一方、これはD-Waveがアニーリング技術から自然に発展させた成果というより、2026年1月に買収したQuantum Circuitsの技術的成果と見る方が正確だ。論文は買収前に投稿され、デュアルレール量子ビットデュアルレール量子ビットDual-Rail Qubit / Dual-Rail Encoding2つの物理モードのどちらに励起があるかなどを使って、1つの量子ビットを表現する符号化方式。QI補足光子や超伝導共振器など複数の実装で使われる。ニュースでは、どの物理系で何をエラーとして検出・抑制できるのかを確認したい。も同社とイェール大学が長年開発してきた。D-Waveが手に入れたのは完成品ではないが、ゲート型競争に参加するための有力なエンジンである。
買収によって技術を得ること自体は良い。問われるのは、研究室で動く2量子ビットの成果を、D-Waveが得意としてきた製造、極低温制御、クラウド運用と結び付けられるかだ。99.9%はゴールではなく、買収した技術をスケールさせるレースへの参加証にすぎない。
そして「Lambda 10」は現時点では実測値ではなく、ノイズモデルを使ったシミュレーション上の可能性である。100論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。という2032年の目標を評価するには、99.9%という一つの数字よりも、物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。数を増やした際の消失率、検出漏れ、クロストーク、論理エラー率を確認する必要がある。量子業界では、9が何個並んだかより、その9を何個の量子ビットで維持できたかが重要だ。
関連記事
- Microsoft、トポロジカル量子プロセッサ「Majorana 2」を発表 量子ビット寿命は平均20秒
- 量子企業29社の実力と将来性ランキング【2026年夏版】
- IBMなど、検証可能な量子計算で「量子優位性」を実証
