D-Wave、2026年第2四半期は売上高310万ドル 上半期受注額は12倍超に拡大
D-Wave Quantumは2026年8月6日、2026年第2四半期決算を発表した。売上高は前年同期比ほぼ横ばいの310万ドル、純損失は4,800万ドルとなった。一方、上半期の受注額は前年同期比1,120%増の3,550万ドルに拡大し、アニーリング方式アニーリング方式量子アニーリング / Quantum Annealing量子ゆらぎを利用して、組合せ最適化問題などの良い解を探索する計算手法。問題をエネルギーが低い状態を探す形に変換して解く。QI補足量子アニーリングは、汎用的なゲート型量子コンピューターとは異なり、最適化問題を解くことに特化した方式である。1990年代に西森秀稔氏らが理論的に提案し、現在はD-Waveが代表的な商用システムを開発している。性能を見る際は、量子ビット数だけでなく、問題の埋め込み方や古典手法との比較条件も確認したい。とゲート方式ゲート方式量子ビットに量子ゲートを順番に作用させて計算する方式。量子回路を組み立ててアルゴリズムを実行する、代表的な量子計算モデル。QI補足量子アニーリングなどとは計算方式が異なる。「ゲート方式」というだけで汎用・大規模な実用計算が可能とは限らず、量子ビット数や誤り率、回路の深さも重要になる。の開発ロードマップも公表した。
発表概要
第2四半期は売上横ばい、開発投資で費用増
2026年第2四半期の売上高は310万ドルで、前年同期の310万ドルとほぼ同水準だった。GAAP粗利益は170万ドル、粗利益率は55.4%となり、前年同期の63.8%から低下した。 GAAP営業費用は前年同期比93%増の5,500万ドルだった。人件費や株式報酬、減価償却費、外部専門サービス費などが増加し、純損失は4,800万ドル、調整後EBITDA調整後EBITDAAdjusted EBITDAEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)から、一時的費用や株式報酬など、企業が指定する項目をさらに除外・調整した利益指標。QI補足調整内容に統一基準がなく、企業間で単純比較しにくい。何を除外したか、GAAP利益との差がどれほどあるかを確認したい。損失は3,710万ドルとなった。純損失は前年同期から縮小したが、主因はワラント負債の再評価に伴う非現金・営業外費用の減少である。
上半期受注額と残存履行義務が拡大
2026年上半期の受注額は3,550万ドルと、前年同期の290万ドルから1,120%増加した。このうち2,000万ドルはシステム販売で、今後の四半期に売上計上される予定である。 6月末時点の残存履行義務は4,070万ドルで、前年同期比668%増となった。同社は、このうち約57%を今後12カ月、72%を今後2年間に売上計上すると見込む。一方、上半期売上高は前年同期比67%減の590万ドルだった。前年同期に計上した1,370万ドルのアニーリング量子コンピューター販売の反動が影響した。 上半期のQCaaS売上高のうち、本番アプリケーション由来は130万ドルで、QCaaS売上高全体の37.3%を占めた。前年同期の比率は9.8%だった。
2方式の開発ロードマップを提示
アニーリング方式では、マルチチップ化した次世代Advantage3について、2029年に2万量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。、2031年に10万量子ビットへ拡張する目標を示した。ゲート方式では、2026年の17物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。から、2030年に10論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。、2032年に100論理量子ビットへ拡張する計画である。 同社は、超伝導デュアルレール量子ビットデュアルレール量子ビットDual-Rail Qubit / Dual-Rail Encoding2つの物理モードのどちらに励起があるかなどを使って、1つの量子ビットを表現する符号化方式。QI補足光子や超伝導共振器など複数の実装で使われる。ニュースでは、どの物理系で何をエラーとして検出・抑制できるのかを確認したい。の誤り訂正上の特性を保つ2量子ビットエンタングリングゲートの研究成果をNatureに発表した。また、誤りを考慮したプログラミング向けのゲート方式シミュレーターを提供する構想も明らかにした。
重要ポイント
- 2026年第2四半期の売上高は310万ドル、純損失は4,800万ドル、調整後EBITDA損失は3,710万ドルだった。
- 上半期受注額は前年同期比1,120%増の3,550万ドルで、2,000万ドルのシステム販売を含む。
- 6月末の残存履行義務は前年同期比668%増の4,070万ドルとなり、約57%を今後12カ月に売上計上する見込みである。
- アニーリング方式では2029年に2万量子ビット、2031年に10万量子ビットを目指すロードマップを示した。
- ゲート方式では2030年に10論理量子ビット、2032年に100論理量子ビットを目標とし、デュアルレール方式の研究成果も発表した。
技術・事業上の意味
受注額と残存履行義務の増加は、将来の売上につながる契約残高が拡大していることを示す。商用顧客由来の売上比率や、QCaaSにおける本番アプリケーション由来の比率が上昇した点も、企業利用の広がりを測る材料となる。ただし、第2四半期売上高は横ばいで、開発・市場展開への投資により営業費用と調整後EBITDA損失は増加しているため、受注拡大が収益改善へ結び付く時期はまだ示されていない。 技術面では、量子アニーリングの大規模化と、誤り耐性ゲート方式の開発を並行させる戦略が明確になった。もっとも、量子ビット数や誤り低減率は将来目標であり、各段階の実機性能や商用提供の実現性は今後の検証対象である。
今後の注目点
まず、2,000万ドルのシステム販売を含む受注と残存履行義務が、会社予想に沿って売上へ転換するかが焦点となる。技術面では、2026年に掲げる17物理量子ビットのゲート方式システムで、論理誤り率が物理誤り率を下回る結果を示せるかが重要である。あわせて、Advantage3のマルチチップ化に必要な実装・相互接続技術の進捗と、QCaaSの本番利用比率が継続的に伸びるかを確認する必要がある。
✍️ Quantum Indexの視点
今回の決算で見るべきなのは、受注額1,120%増という伸び率そのものではなく、契約残高が実際の売上へ転換し始めるかである。上半期売上高は前年同期比67%減、第2四半期も横ばいであり、現時点では受注拡大と業績改善の間に明確な隔たりがある。
2,000万ドルのシステム販売と4,070万ドルの残存履行義務は、将来売上の材料にはなる。一方、営業費用は93%増え、調整後EBITDA調整後EBITDAAdjusted EBITDAEBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)から、一時的費用や株式報酬など、企業が指定する項目をさらに除外・調整した利益指標。QI補足調整内容に統一基準がなく、企業間で単純比較しにくい。何を除外したか、GAAP利益との差がどれほどあるかを確認したい。損失も拡大した。純損失の縮小も事業収益の改善ではなく、ワラント負債の再評価による影響が大きく、収益性が好転したとは言えない。
さらに、2029年に2万物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。のアニーリング機、2032年に100論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。のゲート方式ゲート方式量子ビットに量子ゲートを順番に作用させて計算する方式。量子回路を組み立ててアルゴリズムを実行する、代表的な量子計算モデル。QI補足量子アニーリングなどとは計算方式が異なる。「ゲート方式」というだけで汎用・大規模な実用計算が可能とは限らず、量子ビット数や誤り率、回路の深さも重要になる。システムを実現するというロードマップも示した。ただし、両者は性質の異なる目標であり、単純に量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。数を並べて評価することはできない。
アニーリング方式アニーリング方式量子アニーリング / Quantum Annealing量子ゆらぎを利用して、組合せ最適化問題などの良い解を探索する計算手法。問題をエネルギーが低い状態を探す形に変換して解く。QI補足量子アニーリングは、汎用的なゲート型量子コンピューターとは異なり、最適化問題を解くことに特化した方式である。1990年代に西森秀稔氏らが理論的に提案し、現在はD-Waveが代表的な商用システムを開発している。性能を見る際は、量子ビット数だけでなく、問題の埋め込み方や古典手法との比較条件も確認したい。の2万量子ビットは、数の大きさよりも、マルチチップ化によって接続性やノイズ、実際に扱える問題規模がどう変わるかが重要だ。ゲート方式の100論理量子ビットも極めて野心的ではあるが、2032年までの目標であり、Quantum Circuits由来のデュアルレール方式デュアルレール方式デュアルレール量子ビット / Dual-Rail Qubit / Dual-Rail Encoding2つの物理モードのどちらに励起があるかなどを使って、1つの量子ビットを表現する符号化方式。QI補足光子や超伝導共振器など複数の実装で使われる。ニュースでは、どの物理系で何をエラーとして検出・抑制できるのかを確認したい。のこともあり、現時点で完全な絵空事とまでは言い切れない。まず確認すべきは、17物理量子ビット機で論理誤り率を物理誤り率より低くできるか、そしてその成果を多量子ビットへ拡張できるかである。
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