量子業界36社の実力と将来性ランキング【2026年秋版】
2026年夏版では29社を対象とした量子業界ランキングを、秋版では36社へ拡大した。
この数か月だけでも、大型資金調達、売上の伸長、政府案件、量子コンピューターの納入、次世代ハードウェア、論理量子ビット論理量子ビットLogical Qubit複数の物理量子ビットと量子誤り訂正を使い、エラーから保護された1つの量子ビットとして扱う情報単位。QI補足「論理量子ビットを作った」だけでFTQCが完成したとは限らない。論理エラー率や演算性能、スケール可能性を確認したい。、量子誤り訂正量子誤り訂正Quantum Error Correction / QEC複数の物理量子ビットに情報を分散して持たせ、量子状態を直接壊さずにエラーを検出・訂正する技術。QI補足実施しただけで実用的な耐障害性が得られるわけではない。論理エラー率が物理エラー率より改善しているかが重要になる。(QEC)、製造拠点への投資など、企業を評価する材料は大きく増えている。
今回新たに追跡対象へ加えたのは、Bluefors、Diraq、OQC、Qblox、Quantum Machines、QuantWare、QUDORA、QuEL、Riverlaneの9社。一方、夏版で個別評価していたQuantum CircuitsはD-Wave、Oxford IonicsはIonQによる買収が完了しているため、秋版からそれぞれ買収先の評価へ統合した。
特に秋版で重視したのが、量子ビット量子ビットQuantum Bit / Qubit量子コンピュータで情報を表す基本単位。0と1のどちらかだけでなく、それらを重ね合わせた量子状態を取れる。QI補足量子ビット数が多いほど必ず高性能とは限らない。誤り率、接続性、コヒーレンス時間や論理量子ビット数も重要になる。数以外の部分だ。
量子コンピューターの競争軸は、単純に物理量子ビット物理量子ビットPhysical Qubit量子プロセッサ上で実際に作られ、操作される個々の量子ビット。論理量子ビットを構成するためにも使われる。QI補足搭載数が多くても、そのまま実用計算能力を意味しない。誤り率や接続性、論理量子ビットに必要な個数も重要になる。を増やすことから、論理量子ビット、QEC、リアルタイム制御、古典・量子連携、製造再現性など、システムとして量子コンピューターを成立させる能力へ広がりつつある。
Quantum Indexでは主要な量子関連企業36社について、技術の独自性と実現可能性、製品化までの距離、売上・顧客基盤、資金調達力、ロードマップ、QEC、製造能力などを総合的に評価した。
これは量子コンピューターそのものの性能ランキングではない。ハードウェアだけでなく、ソフトウェア、量子制御、QEC、極低温装置、最適化なども含め、今後3〜5年の量子産業で企業としてどの位置を取れるかを評価している。
また、将来ロードマップよりも、現時点で確認できる技術成果、実機、顧客、売上、契約、製造能力を重視した。
実力と将来性ランキング
1位 Quantinuum|イオントラップ量子コンピューター
前回:1位 →
高精度な量子ビット、QEC、ソフトウェア、セキュリティまでを持ち、技術と事業のバランスは依然として最も良い。
Heliosでは論理量子ビットを使った実証を進め、売上も拡大。Quanta Computerとの協業など、将来の大規模システムを製造する体制まで構築し始めている。
2位 IBM Quantum|超伝導量子コンピューター
前回:3位 ↑
Googleを抜いて2位とした。
Nighthawk r2では回路実行スループットを大幅に高め、QECと誤り緩和を組み合わせた論理量子ビット実証も進む。Qiskit、クラウド、HPCまで含め、量子コンピューターを実際の計算基盤へ組み込む能力は強い。
3位 Google Quantum AI|超伝導量子コンピューター
前回:2位 ↓
Willowを使ったQEC研究など、基礎研究では引き続き世界最高水準にある。
順位低下は技術力の低下ではなく、IBMやQuantinuumがQECだけでなく製品、利用基盤、製造まで前進しているため。大きな研究成果が出れば順位は容易に変わり得る。
4位 IonQ|イオントラップ量子コンピューター
前回:4位 →
量子専業企業として事業規模を急速に拡大し、Oxford IonicsやSkyWaterなどの買収を通じて、QPUから製造までを垂直統合している。
Oxford Ionicsが持つ電子制御型の高精度イオントラップ技術もSuperion 256などIonQの製品ロードマップへ組み込まれ始めているため、秋版からOxford Ionicsは個別企業として扱わず、IonQの技術基盤として一体評価する。
一方、買収によって事業領域が広がったことで、量子コンピューターそのものの成長と買収事業による成長を分けて見る必要性も高まっている。
5位 D-Wave|量子アニーリング・ゲート型量子コンピューター
前回:5位 →
D-Waveの強みは、将来の期待だけでなく、量子アニーリング量子アニーリングQuantum Annealing量子ゆらぎを利用して、組合せ最適化問題などの良い解を探索する計算手法。問題をエネルギーが低い状態を探す形に変換して解く。QI補足量子アニーリングは、汎用的なゲート型量子コンピューターとは異なり、最適化問題を解くことに特化した方式である。1990年代に西森秀稔氏らが理論的に提案し、現在はD-Waveが代表的な商用システムを開発している。性能を見る際は、量子ビット数だけでなく、問題の埋め込み方や古典手法との比較条件も確認したい。を実際の顧客利用と売上につなげている点にある。
2026年にはQuantum Circuitsを買収し、デュアルレール量子ビットデュアルレール量子ビットDual-Rail Qubit / Dual-Rail Encoding2つの物理モードのどちらに励起があるかなどを使って、1つの量子ビットを表現する符号化方式。QI補足光子や超伝導共振器など複数の実装で使われる。ニュースでは、どの物理系で何をエラーとして検出・抑制できるのかを確認したい。を使うゲート型量子コンピューターにも参入した。秋版からはQuantum Circuitsを個別企業として扱わず、D-Waveのdual-platform戦略として一体評価する。
ゲート型参入が量子アニーリング技術による既存事業との相乗効果を生むかは、まだ見極めが必要である。
6位 PsiQuantum|光量子コンピューター
前回:7位 ↑
最初から大規模FTQCFTQCFault-Tolerant Quantum Computing / FTQC量子誤り訂正を用い、物理的なエラーが起きても正しい計算を続けられるようにする、将来の本格的な量子計算の方式。QI補足量子誤り訂正の実証とFTQCの実現は同義ではない。論理エラー率、必要な物理量子ビット数、論理ゲート性能などが重要になる。を構築する戦略は技術リスクが高いが、その実現に必要な製造基盤への投資が具体化してきた。
光スイッチ、単一光子検出器、先端パッケージングなど、ロードマップだけでなく「作る能力」に資金を投入している点を評価した。
7位 Microsoft Quantum|トポロジカル量子コンピューター
前回:6位 ↓
トポロジカル量子ビットが成立すれば、QECのオーバーヘッドを根本的に変える可能性がある。
一方、上位企業と比較できる大規模な計算性能はまだ少ない。潜在的な上振れは極めて大きいが、技術リスクも依然として大きい。
8位 QuEra|中性原子量子コンピューター
前回:8位 →
多数の原子を配置できるスケーラビリティだけでなく、QECや論理性能を重視する方向へ進んでいる。
AWSでの実機提供やオンプレミス展開も進めており、中性原子方式中性原子方式中性原子量子コンピューター / Neutral Atom Quantum Computer / Neutral-Atom Quantum Computing電荷を持たない原子をレーザーなどで捕捉・配列し、その量子状態を量子ビットとして利用する量子計算方式。QI補足多数の原子を規則的に配置しやすい点が特徴。性能比較では原子数だけでなく、ゲート忠実度や再配置、損失率も確認したい。の中では研究成果を製品へつなげやすい位置にいる。
9位 Quantum Machines|量子制御装置・ソフトウェア
NEW
量子ビットそのものではなく、それを動かす制御レイヤーで強いポジションを築いている。
CUDA-Q、GPU、CPU、量子プロセッサ量子プロセッサQuantum Processor / Quantum Processing Unit / QPU量子ビットを搭載し、量子ゲートや測定などの量子計算処理を実行するハードウェアの中核部分。QI補足QPUの性能は量子ビット数だけでは判断できない。ゲート忠実度、接続性、速度、エラー率などを合わせて見る必要がある。を低遅延で統合する取り組みも進み、QECや量子・古典ハイブリッドが重要になるほど存在感が増す可能性がある。
10位 Q-CTRL|量子制御・量子ソフトウェア
前回:10位 →
量子制御、コンパイル、誤り抑制を中心に、既存QPUからより良い結果を取り出す技術を展開する。
量子計算だけでなく量子センシングにも領域を広げており、特定ハードウェアに依存しにくい事業構造も強みとなる。
11位 Bluefors|極低温冷却装置・希釈冷凍機
NEW
超伝導やスピン量子ビットの開発に不可欠な極低温環境を提供し、量子業界を支える代表的な装置メーカー。
一方、国内でもIHIと大陽日酸が産総研向けに1万物理量子ビット級の極低温冷凍システムを開発しており、将来的には競争激化も見込まれる。
特定のQPU方式に賭けるのではなく、複数の量子ハードウェア企業から需要を取れる「つるはし」型のポジションを評価した。
12位 IQM|超伝導量子コンピューター
前回:14位 ↑
欧州を中心にオンプレミス量子コンピューターの納入実績を積み重ねている。
研究開発だけでなく実際に量子コンピューターを販売しながら、HaloceneなどQECを意識した次世代ロードマップも進めている点を評価した。
13位 Alice & Bob|キャット量子ビット
前回:11位 ↓
キャット量子ビットキャット量子ビットCat Qubit / Schrödinger Cat Qubit異なる量子状態を重ね合わせた「猫状態」を利用し、特定種類のエラーを起こりにくくするよう設計された量子ビット。QI補足誤り訂正に必要な負担を減らせる可能性があるが、すべてのエラーが自動的に抑えられるわけではない。残るエラー率にも注目したい。によって特定のエラーをハードウェアレベルで抑える、明確な技術的差別化を持つ。
18キャット量子ビットのオンプレミスシステム「Helium」も発表し、量子ビット研究からシステム提供へ進み始めた。
14位 Xanadu|光量子コンピューター
前回:16位 ↑
PennyLanePennyLanePennyLaneXanaduが開発する、量子回路の構築や実行、量子機械学習などに利用されるオープンソースの量子ソフトウェアライブラリ。QI補足特定の量子ハードウェア専用ではなく、複数のデバイスやシミュレータと連携できる。実証では使用したバックエンドを確認したい。という強いソフトウェア基盤を持ちながら、ハードウェア側でもFTQCへ投資している。
カナダ国内でチップ、パッケージング、試験、モジュール組立までの製造基盤を整備しようとしている点を評価した。
15位 Infleqtion|中性原子量子コンピューター・量子センシング
前回:15位 →
量子計算に加え、センシング、原子時計など複数の量子技術事業を持つ。
売上規模も量子専業企業として比較的大きい。一方、中性原子QPUそのものではQuEraなどとの技術比較が必要になる。
16位 QuantWare|超伝導量子プロセッサ
NEW
完成した量子コンピューターではなく、QPUそのものを外部へ供給する独自のポジションを取る。
大型資金調達と製造拠点への投資を進めるが、大規模量子ビット数のロードマップと実際のQPU性能は分けて評価する必要がある。
17位 Fujitsu|量子コンピューティング
前回:9位 ↓
理研との超伝導量子コンピューター超伝導量子コンピューター超伝導方式 / Superconducting Quantum Computing / Superconducting Qubit超伝導回路を極低温で動作させ、電気的な量子状態を量子ビットとして利用する量子コンピュータの実装方式。QI補足高速なゲート操作などが特徴だが、性能は量子ビット数だけでは決まらない。ゲート忠実度、コヒーレンス時間、接続性、誤り訂正への対応も確認したい。開発、HPCとの統合、国内の政府・研究機関向け基盤など、日本企業としては非常に大きな開発力を持つ。
一方、秋版では物理量子ビット数よりQECや論理性能を重視した。海外上位企業と直接比較できる論理性能指標が今後欲しい。
18位 Atom Computing|中性原子量子コンピューター
前回:12位 ↓
1,000個を超える原子を扱う能力やMicrosoftとの協業など、スケーラビリティでは依然として有力である。
ただし、多数の物理量子ビットを並べられること自体の評価比重は下げた。今後はその規模を論理性能へどう変換するかが重要になる。
19位 Pasqal|中性原子量子コンピューター
前回:18位 ↓
大型資金調達や海外展開を進め、事業面では活発な動きが続く。
一方、中性原子方式では競合が多い。資金力や案件数だけでなく、実機性能と商用利用をどこまで積み上げられるかが重要になる。
20位 Qblox|量子制御・読み出し装置
NEW
量子コンピューターの制御装置を提供し、QEC時代のリアルタイム制御にも領域を広げている。
Riverlaneとの実証では、測定データ取得からデコード、条件付き補正までのループを構築した。ただし、速度だけでなく訂正後の精度を含む性能評価が今後必要になる。
21位 Riverlane|量子誤り訂正
NEW
QECを独立した製品レイヤーとして事業化しようとしている数少ない企業である。
Deltaflowを軸に複数のハードウェア企業と連携する。QEC市場が本格化すれば大きな機会がある一方、IBMやGoogleなどハードウェア企業による内製との競争もある。
22位 Classiq|量子ソフトウェア・アルゴリズム
前回:13位 ↓
高水準のモデルから量子回路量子回路Quantum Circuit量子ビットに対する初期化、量子ゲート操作、測定などを順番に並べ、量子コンピュータで実行する計算手順を表したもの。QI補足同じアルゴリズムでも、使用する量子ビット数や回路深度、ゲート数は実装によって変わる。実機性能を比べる際は、回路の規模やコンパイル後の条件も確認したい。を生成・最適化するソフトウェアに独自性を持つ。
一方、CUDA-Qや各ハードウェア企業のSDKが高機能化する中、独立した量子ソフトウェア層がどこまで大きな商用市場を形成できるかは不透明である。
23位 Photonic Inc.|光・スピン系量子コンピューター
前回:20位 ↓
スピン量子ビットと光インターコネクトを組み合わせ、モジュール型のFTQCを目指す。
大型製造施設への投資構想も進むが、製造能力と量子コンピューターとしての性能は別である。今後は実機での成果を見たい。
24位 OptQC|光量子コンピューター
前回:26位 ↑
秋版で評価を大きく上げた日本企業の一つ。
実機稼働に続き、大型資金調達と研究開発拠点の拡張が進む。次に問われるのは将来の量子ビット数目標ではなく、実機性能と2台目、3台目の受注・納入である。
25位 planqc|中性原子量子コンピューター
前回:19位 ↓
ドイツを中心に政府案件やオンプレミス導入を進める。
政府調達を取れる点は強みだが、中性原子方式では競合も多い。実機性能と継続的な商用需要をどこまで示せるかが焦点となる。
26位 Fixstars Amplify|最適化・量子ソフトウェア
前回:17位 ↓
Amplify、JIJ、Strangeworksはいずれも、量子・量子インスパイアード量子インスパイアード量子インスパイアード技術 / Quantum-Inspired Technology / Quantum-Inspired Computing量子計算の考え方や数理手法に着想を得ながら、主に古典コンピュータ上で動作する計算技術。特に組合せ最適化の分野で広く用いられている。QI補足「量子」と付いていても量子ハードウェアを使うとは限らない。発表では実際の計算基盤と、古典手法に対する優位性を確認したい。特に最適化分野では、実用上すでに実用レベルの高い性能を示すソルバーも存在する。最適化を扱い、複数のハードウェアやソルバーに対応する。
その中でAmplifyは、高性能な独自開発GPUアニーリングソルバー「Amplify AE」を持つ点が特徴。量子アニーリングやゲート型量子計算機にも広く対応しつつ、事業としては実務の組合せ最適化組合せ最適化Combinatorial Optimization多数の選択肢の組み合わせから、条件を満たしつつ目的値が最良になる組み合わせを探す最適化問題。QI補足量子計算の代表的な応用候補だが、古典アルゴリズムも非常に強力。量子手法の評価では同等条件での比較が重要になる。を中心に展開している。
量子技術だけでなく、現在の最適化市場でどこまで事業規模を拡大できるかが評価を左右する。
27位 Rigetti|超伝導量子コンピューター
前回:21位 ↓
自社Fabを持ち、量子チップの設計・製造からクラウド提供までを自社で扱える独立系企業である。
一方、超伝導方式では競合が強い。QEC時代につながる明確な技術的差別化を示せるかが必要になる。
28位 Diraq|シリコンスピン量子コンピューター
NEW
既存の半導体製造技術との親和性が高いシリコンスピン量子ビットを使い、大規模集積を目指す。
数十万物理量子ビット、1,000論理量子ビット級のロードマップを掲げるが、現在の実機との距離は大きい。ロードマップを実際の集積技術へ変えられるかを見たい。
29位 QuEL|量子制御装置
NEW
大阪大学発の量子制御装置企業。
派手な量子コンピューターのロードマップは持たないが、すでに製品販売で売上を得て黒字化している点は、量子スタートアップとして特徴的である。
主力としてきた超伝導方式に加え、イオントラップ向けでも制御装置も開発中。海外を含む顧客基盤の拡大が次の焦点となる。
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30位 OQC|超伝導量子コンピューター
NEW
英国発の超伝導量子コンピューター企業で、データセンターへの統合を意識したシステムを開発する。
QEC統合にも取り組むが、IBMやIQMと比べると、実機性能、納入実績、売上など外部から比較できる材料はまだ少ない。
31位 QunaSys|量子アルゴリズム・ソフトウェア
前回:24位 ↓
量子化学・材料計算を中心に、日本企業との共同研究・受託研究を長年積み重ねている。
技術領域の専門性は高いが、研究成果を大規模な継続収益へ変える道筋はまだ見えにくい。
32位 QUDORA|イオントラップ量子コンピューター
NEW
ドイツ発のイオントラップ企業で、日本法人の設立など海外展開を始めている。
日本を含め実機利用へつながる販売チャネルを構築しているが、QuantinuumやIonQと比較できる実機性能や事業規模の情報はまだ限られる。
33位 Strangeworks|量子コンピューティング・ソフトウェア
前回:25位 ↓
Fixstars AmplifyやJIJと同じく量子・量子インスパイアード最適化を扱うが、複数ベンダーの計算資源を束ねるプラットフォームとしての性格が強い。
Quantagonia買収によってHybridSolverなど最適化機能も取り込んだ。複数バックエンド対応自体が一般化する中、単なる接続基盤を超えた独自価値をどこまで示せるかが焦点となる。
34位 JIJ|最適化・量子ソフトウェア
前回:27位 ↓
JIJもFixstars AmplifyやStrangeworks同様、量子・量子インスパイアード最適化を中心とし、複数の計算バックエンドを扱う。
量子関連の研究開発や発信も活発だが、公開されている導入事例では、数理最適化を使った企業の計画・業務課題の解決が目立つ。こうした案件型の事業を、どこまで再現性のある製品・継続収益へ発展させられるかを見たい。
35位 Quemix|量子アルゴリズム・ソフトウェア
前回:28位 ↓
量子化学・材料計算を中心に、企業との共同研究を継続している。
材料分野は量子計算の有力用途だが、本格的な量子アルゴリズム利用にはFTQC側の進展も必要になる。現在の共同研究や受託契約を継続的なストック型収益へ変えられるかが重要である。
36位 Yaqumo|中性原子量子コンピューター
前回:29位 ↓
京都大学・分子科学研究所発の日本の中性原子量子コンピュータースタートアップ。
部品開発や国内サプライチェーン構築を進めているが、設立からまだ日が浅く、比較可能な実機性能、製品、顧客、売上などの公開材料は少ない。
最下位は技術評価が低いという意味ではなく、現時点で他社と比較できる実績が最も限られているためである。
夏版からの順位変動を見る
秋版では新たに9社を追加したうえ、夏版で個別評価していたQuantum CircuitsとOxford IonicsをそれぞれD-WaveとIonQへ統合した。
そのため、単純に夏版と総合順位だけを比較すると、新規企業が上位へ入ったことで順位を下げたのか、企業評価そのものが変わったのかが分かりにくい。
そこで、夏版・秋版の双方で独立して評価できる27社だけを抜き出し、同じ母集団で順位を比較した。
| 企業 | 秋・総合順位 | 秋・継続27社内 | 夏・継続27社内 | 実質変動 |
|---|---|---|---|---|
| Quantinuum | 1 | 1 | 1 | → |
| IBM Quantum | 2 | 2 | 3 | ↑1 |
| Google Quantum AI | 3 | 3 | 2 | ↓1 |
| IonQ | 4 | 4 | 4 | → |
| D-Wave | 5 | 5 | 5 | → |
| PsiQuantum | 6 | 6 | 7 | ↑1 |
| Microsoft Quantum | 7 | 7 | 6 | ↓1 |
| QuEra | 8 | 8 | 8 | → |
| Q-CTRL | 10 | 9 | 10 | ↑1 |
| IQM | 12 | 10 | 14 | ↑4 |
| Alice & Bob | 13 | 11 | 11 | → |
| Xanadu | 14 | 12 | 16 | ↑4 |
| Infleqtion | 15 | 13 | 15 | ↑2 |
| Fujitsu | 17 | 14 | 9 | ↓5 |
| Atom Computing | 18 | 15 | 12 | ↓3 |
| Pasqal | 19 | 16 | 18 | ↑2 |
| Classiq | 22 | 17 | 13 | ↓4 |
| Photonic Inc. | 23 | 18 | 20 | ↑2 |
| OptQC | 24 | 19 | 24 | ↑5 |
| planqc | 25 | 20 | 19 | ↓1 |
| Fixstars Amplify | 26 | 21 | 17 | ↓4 |
| Rigetti | 27 | 22 | 21 | ↓1 |
| QunaSys | 31 | 23 | 22 | ↓1 |
| Strangeworks | 33 | 24 | 23 | ↓1 |
| JIJ | 34 | 25 | 25 | → |
| Quemix | 35 | 26 | 26 | → |
| Yaqumo | 36 | 27 | 27 | → |
この比較を見ると、総合順位だけでは見えなかった変化が分かる。
例えばIQMは総合12位だが、同じ27社だけで比較すると14位から10位へ上昇。Xanaduも16位から12位、OptQCは24位から19位へ大きく上がった。
一方、Fujitsuは新規企業の追加だけが原因ではなく、既存企業だけで比較しても9位から14位へ低下している。Classiqも13位から17位、Fixstars Amplifyも17位から21位となった。
逆にFixstars Amplifyの総合順位だけを見ると17位から26位へ9つ下がったように見えるが、同じ企業群だけで比較した実質的な低下幅は4つとなる。
また、夏版でOxford Ionicsより下位だったQunaSys、Strangeworks、JIJなどについても、買収企業を母集団から除外したうえで比較している。そのため、M&Aによる機械的な順位上昇は「実質変動」には含めていない。
総合順位は2026年秋時点の量子業界全体での位置、継続27社内順位は夏から秋にかけて企業評価そのものがどう変化したかを見る指標として分けている。
2026年秋版ランキングから見えること
夏版から秋版までの短い期間でも、量子業界で見るべき数字はかなり変わった。
以前は「何量子ビットあるか」が最も分かりやすい比較材料だった。しかし現在は、同じ100物理量子ビットでも、エラー率、回路深度回路深度Circuit Depth / Quantum Circuit Depth量子回路で、同時に実行できる操作をまとめたうえで、計算完了までに何段階のゲート操作が必要かを表す指標。QI補足深い回路ほど一般にノイズの影響を受けやすいが、深度だけで性能は決まらない。ゲート種類や誤り率、接続性、コンパイル後の回路も合わせて見る必要がある。、実行速度、接続性、QEC後の論理性能によって実際の計算能力は大きく異なる。
そのため、IBM、Quantinuum、QuEraなどでは、単純な物理量子ビット数よりも、論理量子ビット、実行スループットスループットThroughput一定時間あたりに処理できる仕事量を示す指標。量子計算では、回路やジョブをどれだけ速く繰り返し実行できるかなどを表す。QI補足スループットの定義や単位は企業・システムごとに異なる。比較する際は、単なる実行回数だけでなく、回路規模や精度、待ち時間などの条件も確認したい。、QEC性能といった指標によりフォーカスが移っていると見える。
同時に、量子コンピューターの周辺にある企業の重要性も増している。
今回新たに上位へ入れたQuantum MachinesやQbloxは量子ビットを作らない。RiverlaneもQPUメーカーではなくQECを専門とし、Blueforsは冷却装置を作る。
しかし、大規模FTQCを実現するには量子ビットだけでは足りない。測定結果を高速に読み出し、古典計算古典計算Classical Computing / Classical Computation0と1のビットを使って計算する、現在一般に使われているコンピューターによる計算方式。QI補足量子計算との比較対象として使われるが、CPU、GPU、スーパーコンピュータや専用アルゴリズムまで含み得るため比較条件に注意したい。で処理し、その結果を量子系へ戻す制御系や、安定した極低温環境など、システム全体を成立させる技術が必要になる。
もう一つ目立つのが製造への投資だ。
PsiQuantum、Xanadu、QuantWare、OptQC、Photonicなどが、それぞれ製造設備や研究開発拠点への投資を進めている。
これは量子コンピューターがすでに量産段階に入ったという意味ではない。
むしろ、研究室で一台の高性能機を作る能力と、同じ品質のシステムを繰り返し作る能力が別物であることを各社が意識し始めたと見る方がよい。
一方で、巨額の資金調達や大きなロードマップだけで順位を上げることもしなかった。
「1万量子ビット」「100万量子ビット」「1,000論理量子ビット」といった数字は分かりやすいが、その多くは将来目標である。論理エラー率、ゲート性能、回路深度、実行速度、製造歩留まりまで見なければ、実際の計算能力は判断できない。
売上についても同様だ。
量子コンピューターの利用料なのか、システム販売なのか、政府研究契約なのか、量子センシング量子センシングQuantum Sensing重ね合わせや量子干渉などの量子現象を利用し、磁場、時間、重力などを高感度に測定する技術。QI補足量子コンピュータとは別の量子技術分野で、すでに実用化された例もある。性能を見る際は感度、分解能、測定環境を確認したい。なのか、買収した既存事業なのかによって意味は異なる。売上高だけを並べても、量子コンピューター事業の進展を正しく比較できるとは限らない。
Quantum Indexでは、「誰が最も大きなことを言っているか」ではなく、「誰が実際に前へ進んでいるか」を重視する。
論理量子ビット、QEC性能、実機納入、売上、顧客、政府案件、製造能力。その一つだけを見るのではなく、それぞれの成果が次の成果へつながっているかを今後も追っていく。
※本記事は2026年9月時点で確認できる公開情報に基づくQuantum Index編集部の評価です。量子コンピューターの純粋な性能順位や、株式その他の金融商品の売買を推奨するものではありません。非上場企業については売上や技術性能の開示が限られ、「公開情報の少なさ」が順位に影響している場合があります。
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